境界を越える幸せ

21世紀社会デザイン研究科 立花ゼミ 平和教育班 ハンドルネーム:中岡ともの のブログ
境界を越える幸せ TOP  >  2010年05月

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アマチュアの領分

7月から10月の演奏会に向けて練習しなければいけない曲が雪だるま状態になってきました。

一回経験した曲もあれば、初めての曲もある。
オーケストラの曲もあれば、ソロ、室内楽の曲もあります。

一回経験した曲は、曲の雰囲気がわかっているので、前回よりもう少し角度を変えて弾けないか考えます。

弓の使い方、運指などの技術面だけでなく、
作曲された時代背景や作曲者の年齢も考えたりすると、別の解釈も考えられます。
とくに自分の年齢と近くなっているとそれだけで思う入れが違います。

最近は、クララ・シューマンのバイオリン曲を演奏する機会があり、練習してみました。
当時の女性のおかれた状況とか心情とかを思いながら弾いてみると、
旦那のロベルトシューマンにはみられない独特の個性とかがみえてきて、
ジェンダー視点の育成という点で、自分の研究にも役にやったかな、と思っています。

へたくそでもいいから、実際に弾いてみるっていうのは、
作曲者の個性の違いとか、
当時の時代背景とか交流とか年齢とか、
いろいろ思いを巡らすことができて面白いです。

それもアマチュアの場合は、結果を求められないので、
上手に、ましては全部弾けるようにならなくてもだれにも責任は問われない。

そんなことを漠然と考えていたとき、下記の本に出会いました。

岡田 暁生 (著)
音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書) (新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/412102009X

5章に「アマチュアの権利―してみなければ分からない」

という章がありますが、いくつか抜粋します。
___________________________

・もっと聴いて楽しみたいから学ぶ、というアマチュアにとって何より必要なのは、一方的でない学び、つまり巧みに弾くことだけを至上目的としない学習であるはずだ・・・

・確かに現代社会においては、こうした経済営為から離れた「楽しみの空間」を見出すことは困難を極めるかもしれない。もはや社会が趣味を入れ込むなどという悠長なことを許容しなくなってきているからこそ、どんどん音楽体験は受動的になり、あるいは効率化されていったのである。

・現代人はとにかく忙しすぎる。絶えず雑事に追いたてられている。自分で音楽をする気力など失せてしまうのだ。

・何より確保されねばならないのは、経済営為とは無縁でありつつも一種の公共性を備えて社交空間としての、真摯なる「アマチュアの領分」ではないだろうか。

____________________________

同著によれば、音楽社会学の分野を切り開いたT・アドルノはエッセイの中でディレッタンティズム(音楽愛好家=いまのアマチュア)を、「真の演奏の伝統の余韻である、没落の産物」とあらわしているそうである。

内容から察するに、与えられた解釈や弾き方を忠実にこなすだけで、揺り動かしたり、疑問を解消しながら、それまでの解釈をもんで、さらにその上の演奏へいきつくこと断念しているアマチュアへの警告であったと私は読み取れる。

アマチュアは、下手でも、プロと同じくらいの音楽への思いをもって接することが、音楽の発展へとなるとあらためてこの本で確信をもった。

だが、著者の岡田氏はこうもいっている。
______________________

・どれだけ難しかろうと私たちは「する」と「聴く」「語る」とが、絶えず入れ替わりながらも、一体となる空間を作ることから始めていかなければならない。しかし結局のところ、それは社会の問題である。
______________________

いみじくも先のアドルノのエッセイが書かれたのは、ヒットラーが政権掌握した1933年。
彼はこうも書いている。
「自分もまた芸術家になりたいという夢を食んで生きている最後のディレッタントが死んでしまったら、最後の芸術家は一体誰にむけて無意味ではなく演奏するのだろう」

アマチュアが活動する領分が狭くなっていくこと、それは芸術活動に意味が与えられなくなることを予言し、ひいては、社会に余裕がなくなり、何か危機的な状況が差し迫っている前兆である、と歴史が物語っているのではないだろうか?
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[ 2010/05/09 11:07 ] 音楽 | TB(0) | CM(0)


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